旅行業界の基礎知識:業態・仕組み・キャリア・最新動向を徹底解説

著者: Tripfolio編集部公開日: 2025/11/30

旅行業とは?基本的な定義と役割

旅行業界への就職・転職を検討する際、「旅行業とはどのような仕事なのか」「どのような資格が必要なのか」と悩む方は少なくありません。

この記事では、旅行業の種類、仕事内容、必要な資格、業界動向を、観光庁日本旅行業協会の公式情報を元に解説します。

旅行業界の全体像を理解し、キャリアを検討する際の参考にしていただけます。

この記事のポイント

  • 旅行業とは「報酬を得て」「事業として」旅行サービスを提供することで、観光庁または都道府県の登録が必要
  • 旅行業は第1種(国内外)、第2種(国内のみ)、第3種(特定条件の国内)に分かれ、事業規模に応じて選択できる
  • 旅行業務取扱管理者が唯一の国家資格で、営業所ごとに選任が法律で義務付けられている
  • 2025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人(対2019年126.1%)と過去最高を更新見込みで、業界は回復基調にある
  • デジタル化・サステナブル旅行が2024-2025年のキーワードとなっている

(1) 旅行業の法的定義(旅行業法第2条・3条)

旅行業とは、日本旅行業協会によると、「旅行業務」を「事業として」「報酬を得て」行うことを指します。

具体的には、以下の3要件を満たす場合に旅行業登録が必要となります。

  • 報酬を得る: 無償のボランティアガイドは対象外
  • 旅行業務を行う: 交通・宿泊の手配、媒介、旅行プランの企画等
  • 事業として行う: 継続的・反復的に行う場合(単発の友人への紹介は対象外)

観光庁は、旅行業法の目的を「旅行業の登録制度を実施し、適正な業務運営を確保すること」と定めています。旅行者の利便増進、取引の公正維持、旅行の安全確保がその柱です。

(2) 旅行業の登録が必要なケース・不要なケース

旅行業登録が必要かどうかの判断は、事業内容により異なります。

✅ 登録が必要なケース:

  • ツアーの企画・販売(宿泊・交通を含む)
  • 旅行者のためにホテル・航空券を手配・予約代行し、報酬を得る
  • 旅行プランの媒介(旅行者と旅行業者の間を取り持つ)

❌ 登録が不要なケース:

  • 日帰りで徒歩のみの観光案内(宿泊・交通手配がない場合)
  • 施設の入場券販売のみ(旅行サービスの手配を伴わない)
  • ビザの代理取得(旅行業務に該当しない)

サポート行政書士法人によると、宿泊や交通手配が伴う場合は、たとえ小規模であっても旅行業登録が必要となります。無登録営業は罰則の対象となるため、事業開始前に観光庁または都道府県に確認することをおすすめします。

(3) 旅行業法の目的(取引の公正・旅行の安全・利便増進)

旅行業法は、旅行業者団体の活動を促進し、以下の3つの目的を果たすことを目指しています。

  • 取引の公正維持: 不当な料金請求や虚偽広告を防止
  • 旅行の安全確保: 旅行中のトラブル発生時の対応体制を整備
  • 旅行者の利便増進: 旅行サービスの質向上、情報提供の充実

旅行業法により、旅行者は安心して旅行サービスを利用できる環境が整備されています。

旅行業の種類と業態(第1種・第2種・第3種)

旅行業は、取り扱う旅行の範囲により第1種・第2種・第3種に分類されます。それぞれの特徴を理解することで、自分がどの種類の旅行業を開業・就職すべきかが見えてきます。

(1) 第1種旅行業(国内・海外両方)

第1種旅行業は、国内旅行・海外旅行の両方を企画・実施できる最も幅広い業態です。

  • 対象: 国内外のツアー企画、航空券手配、ホテル予約等
  • 登録先: 観光庁長官
  • 特徴: 大手旅行会社(JTB、HIS等)がこの分類に該当

第1種旅行業を開業するには、営業保証金1,100万円(または旅行業協会への加入で300万円)が必要です。事業規模が大きく、資本力のある企業が選択する傾向にあります。

(2) 第2種旅行業(国内のみ)

第2種旅行業は、国内旅行のみを企画・実施できる業態です。

  • 対象: 国内ツアー企画、国内宿泊・交通手配
  • 登録先: 都道府県知事
  • 特徴: 地域密着型の旅行会社がこの分類に該当

第2種旅行業の営業保証金は300万円(または旅行業協会への加入で90万円)で、第1種に比べて開業ハードルが低いのが特徴です。

(3) 第3種旅行業(特定条件の国内)

第3種旅行業は、特定条件下での国内旅行のみを取り扱える業態です。

  • 対象: 自治体や企業の団体旅行、修学旅行等(一般消費者向け募集型ツアーは不可)
  • 登録先: 都道府県知事
  • 特徴: 小規模事業者、地域の観光協会がこの分類に該当

第3種旅行業の営業保証金は100万円(または旅行業協会への加入で30万円)で、最も少額で開業できます。

(4) 旅行業者代理業との違い

旅行業者代理業とは、既存の旅行業者の代理として旅行サービスを販売する業態です。

  • 登録先: 観光庁長官または都道府県知事
  • 特徴: 自社でツアーを企画せず、他社のツアーを販売するのみ
  • 営業保証金: 不要(代理元の旅行業者が責任を負う)

旅行業者代理業は、旅行業登録に比べて開業ハードルが低く、小規模事業者が選択するケースが多いです。

旅行業の仕事内容・主な職種

旅行業界の仕事は多岐にわたります。ここでは、主な職種とその役割を紹介します。

(1) ツアープランナー(企画・開発)

ツアープランナーは、旅行商品(ツアー)を企画・開発する職種です。

  • 主な業務: 旅行先の選定、宿泊・交通手配、旅行費用の設定、パンフレット作成
  • 求められるスキル: 企画力、市場調査能力、交渉力

リクナビによると、ツアープランナーには旅行先の最新トレンドを把握し、魅力的なプランを提案する力が求められます。

(2) ツアーコンダクター(添乗員)

ツアーコンダクターは、ツアーに同行し、旅行者の安全と満足度を確保する職種です。

  • 主な業務: ツアー中の案内、トラブル対応、旅程管理
  • 求められるスキル: コミュニケーション能力、語学力、臨機応変な対応力

ツアーコンダクターは、旅行業界の「顔」として、旅行者に直接サービスを提供します。

(3) カウンターセールス(店頭販売)

カウンターセールスは、旅行会社の店頭で旅行商品を販売する職種です。

  • 主な業務: 顧客の旅行プラン提案、予約手配、問い合わせ対応
  • 求められるスキル: 接客スキル、提案力、商品知識

カウンターセールスは、旅行者の要望を聞き取り、最適なプランを提案する力が求められます。

(4) 法人営業(企業向け旅行手配)

法人営業は、企業向けに出張・社員旅行・報奨旅行等を提案・手配する職種です。

  • 主な業務: 企業へのプレゼンテーション、契約交渉、旅行手配
  • 求められるスキル: 営業力、プレゼンテーション能力、ビジネスマナー

法人営業は、企業との長期的な取引を構築することが重要です。

(5) バックオフィス(予約管理・精算等)

バックオフィスは、予約管理、精算、システム運用等を担う職種です。

  • 主な業務: 予約データ入力、請求書作成、問い合わせ対応
  • 求められるスキル: 正確性、事務処理能力、ITリテラシー

バックオフィスは、旅行業の円滑な運営を支える縁の下の力持ちです。

旅行業に必要な資格・スキル・キャリアパス

旅行業界で働くために、どのような資格・スキルが必要なのでしょうか。

(1) 旅行業務取扱管理者(国家資格・唯一の必須資格)

旅行業務取扱管理者は、旅行業法で営業所ごとに選任が義務付けられた国家資格です。

観光庁によると、旅行業者は営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任し、業務の管理・監督を行わせる義務があります。

(2) 総合・国内・地域限定の違い

旅行業務取扱管理者には、以下の3種類があります。

資格名 取り扱い範囲 難易度
総合旅行業務取扱管理者 国内・海外両方
国内旅行業務取扱管理者 国内のみ
地域限定旅行業務取扱管理者 特定地域の国内旅行

総合旅行業務取扱管理者は、国内・海外の両方を取り扱えるため、第1種旅行業で働く場合に必須です。

(3) 求められるスキル(コミュニケーション能力・企画力)

旅行業界で働くためには、以下のスキルが重視されます。

  • コミュニケーション能力: 顧客・取引先との円滑なやり取り
  • 企画力: 魅力的な旅行プランの提案
  • 語学力: 海外旅行を扱う場合、英語や他言語のスキルがあると有利
  • ITリテラシー: 予約システム、オンライン販売の知識

(4) 未経験からのキャリアパス

未経験でも旅行業界で働くことは可能です。

  • 入社後の流れ: カウンターセールスやツアーコンダクターから始め、旅行業務取扱管理者の資格取得を目指す
  • 資格取得支援: 多くの旅行会社が社員の資格取得をサポート
  • キャリアアップ: 資格取得後、ツアープランナーや法人営業に異動するケースが多い

旅行業界は、未経験から始めても、資格取得とスキル向上により着実にキャリアを積める業界です。

旅行業界の最新動向・トレンド(2024-2025年)

旅行業界は、コロナ禍からの回復を経て、新たな成長フェーズに入っています。ここでは、2024-2025年の最新動向を紹介します。

(1) インバウンド市場の成長(2025年4,020万人見込み)

観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人(対2019年126.1%)と過去最高を更新する見込みです。

インバウンド旅行者は2024年に8.1兆円を消費し、観光業は自動車産業に次ぐ日本第2の輸出産業となりました。訪日旅行市場は、日本経済にとって重要な柱となっています。

(2) デジタル化の加速(スマホ予約37%)

やまとごころ.jpによると、2024年にはスマートフォンでの旅行予約が全体の37%に達する見込みです。

オンライン予約システム、AIを活用したレコメンデーション、チャットボット対応等、デジタル技術の導入が進んでいます。旅行業界で働くためには、ITリテラシーの向上が不可欠となっています。

(3) サステナブル旅行への関心の高まり

持続可能な観光(サステナブル旅行)が2024-2025年の主要トレンドとなっています。

  • 環境配慮: CO2排出削減、プラスチック削減
  • 地域貢献: 地域経済への還元、地域文化の保護
  • 旅行者の意識: 環境に配慮した宿泊施設・ツアーを選ぶ傾向が強まる

旅行業界は、環境・社会に配慮した事業運営が求められる時代に入っています。

(4) 2025年のトレンド予測(detour・地方誘客)

JTBグループによると、2025年は「detour(回り道)」がトレンドになると予測されています。

  • 地方への関心: 東京・大阪・京都以外の地方都市への旅行が増加
  • ローカル体験: 地域の文化・食・自然を体験する旅行スタイルが人気

地方への誘客促進は、地域経済の活性化にもつながります。

(5) コロナ後の業界回復状況

コロナ禍で大打撃を受けた旅行業界は、2023年以降、急速に回復しています。

  • 旅行需要: 国内旅行・海外旅行ともに回復基調
  • 採用状況: 人手不足が顕著で、新卒・中途採用ともに活発化
  • 業界再編: コロナ禍で淘汰が進み、生き残った企業が強化されている

旅行業界は、コロナ前とは異なる形で成長を続けています。

まとめ:旅行業界でのキャリアを検討する際のポイント

旅行業は、「報酬を得て」「事業として」旅行サービスを提供することで、第1種・第2種・第3種の3つに分類されます。旅行業務取扱管理者が唯一の国家資格で、営業所ごとに選任が法律で義務付けられています。

2025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人と過去最高を更新見込みで、業界は回復基調にあります。デジタル化・サステナブル旅行が主要トレンドとなり、ITリテラシーや環境配慮の意識が求められています。

未経験でもカウンターセールスやツアーコンダクターから始められ、旅行業務取扱管理者の資格取得を目指すことでキャリアアップが可能です。詳細は観光庁日本旅行業協会の公式サイトで最新情報をご確認ください。

よくある質問

Q1旅行業に必要な資格は?

A1旅行業務取扱管理者が唯一の国家資格で、営業所ごとに選任が法律で義務付けられています。総合(国内外)、国内、地域限定の3種類があり、事業内容に応じて選択できます。総合旅行業務取扱管理者は国内・海外の両方を取り扱えるため、第1種旅行業で働く場合に必須です。詳細は観光庁の公式サイトでご確認ください。

Q2未経験でも旅行業界で働ける?

A2未経験でもカウンターセールスやツアーコンダクターから始められます。入社後に旅行業務取扱管理者の資格取得を目指すケースが多く、多くの旅行会社が社員の資格取得をサポートしています。コミュニケーション能力と企画力が重視されるため、接客業や営業職の経験があると有利です。資格取得後は、ツアープランナーや法人営業に異動することも可能です。

Q3旅行業界の給与水準は?

A3職種や企業規模により異なりますが、大手旅行会社の平均年収は400-600万円程度とされています。経験や資格により昇給する傾向にあり、旅行業務取扱管理者の資格保持者は待遇が良い場合が多いです。詳細は各企業の求人情報や転職サイトでご確認ください。執筆時点(2025年)の情報であり、最新の給与水準は変動する可能性があります。

Q4コロナ後の旅行業界の動向は?

A42025年の訪日外国人旅行者数は4,020万人(対2019年126.1%)と過去最高を更新する見込みです。インバウンド消費は8.1兆円に達し、観光業は自動車産業に次ぐ日本第2の輸出産業となりました。デジタル化・サステナブル旅行がトレンドで、スマートフォンでの旅行予約が全体の37%を占めています。業界は回復基調にあり、採用も活発化しています。詳細は観光庁の公式サイトでご確認ください。

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Tripfolio編集部

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