海外旅行の薬準備はなぜ重要なのか
海外旅行の準備をする際、「どんな薬を持っていけばいいのか」「処方薬は持ち込めるのか」「税関で申告が必要なのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、海外旅行に持っていくべき常備薬リスト、持ち込みルールと手続き、処方薬の薬剤証明書取得方法、現地での薬購入時の注意点を、厚生労働省、厚生労働省検疫所FORTH、在日米国大使館の公式情報を元に解説します。
初めて海外旅行をする方でも、安全に医薬品を準備し、健康リスクを最小限に抑える方法が分かります。
この記事のポイント
- 市販薬(胃薬・解熱鎮痛剤・下痢止め等)は事前手続きなしで海外に持ち込み可能
- 処方薬は「薬剤証明書」を病院で発行してもらい、英文を用意すると安心
- 必要量の目安は「旅行日数分+1週間分の予備」程度、大量持ち込みは営業目的を疑われる可能性あり
- 粉薬は違法薬物と誤解されるリスクがあるため、錠剤・カプセルなど他の剤形に変更を相談
- 向精神薬・医療用麻薬は国によって厳格な規制があり、無許可持ち込みは重い刑罰の対象
(1) 海外旅行でかかりやすい病気と健康リスク
厚生労働省検疫所FORTHによると、海外旅行中にかかりやすい病気には以下のようなものがあります。
- 下痢・腹痛: 飲食物の違い、感染症(旅行者下痢症)
- 風邪・発熱: 気候の変化、移動疲れによる体調不良
- 頭痛・めまい: 高地・長時間移動・時差ボケ
- 虫刺され: 蚊・ダニなどによる感染症リスク
事前に常備薬を準備しておけば、現地での軽い体調不良に対応でき、旅行を楽しみ続けることができます。
(2) 現地の医療事情と言語の壁
海外では医療費が高額な国(米国・欧州等)や、言語の壁で適切な医療を受けにくい国があります。軽い症状であれば、持参した常備薬で対応する方が安心です。
厚生労働省の情報によると、海外旅行保険に加入していても、持病の悪化や予防可能な病気は補償対象外の場合があるため、事前の薬準備が重要です。
海外への薬の持ち込みルールと基礎知識
(1) 市販薬の持ち込み(手続き不要)
厚生労働省によると、市販薬(風邪薬・胃薬・解熱鎮痛剤・下痢止め等)は、個人使用目的であれば事前手続きなしで海外に持ち込み可能です。
ポイント:
- 元のパッケージ(外箱・PTPシート)のまま持参
- 他の容器に移し替えると成分確認が困難になり、税関で問題になる可能性あり
- 必要量の目安は「旅行日数分+1週間分の予備」程度
アイン薬局の薬剤師監修記事でも、パッケージのまま持参することが推奨されています。
(2) 向精神薬・医療用麻薬の持ち込み手続き
向精神薬(精神安定剤・抗うつ薬・睡眠薬)や医療用麻薬(モルヒネ等)は、国によって厳格な規制があります。
厚生労働省によると、以下の手続きが必要です。
| 薬の種類 | 手続き | 申請先 |
|---|---|---|
| 向精神薬 | 薬剤携行証明書の取得 | 処方した病院 |
| 医療用麻薬 | 厚生労働省地方厚生局麻薬取締部への許可申請 | 厚生労働省地方厚生局 |
(出典: 厚生労働省)
無許可で持ち込むと、重い刑罰(懲役・罰金等)が課される可能性があります。渡航前に必ず確認してください。
(3) 国別の注意点(米国・台湾等)
国によっては、日本では合法の薬でも持ち込み禁止の場合があります。
米国: 在日米国大使館によると、ロヒプノール(睡眠薬)等の特定薬物は米国への持ち込みが禁止されています。処方薬は英文の処方箋・診断書を携行することが推奨されています。
台湾: 市販薬の持ち込み数量に制限がある場合があり(6種類まで等)、事前確認が必要です。
渡航先の大使館・領事館の公式サイトで最新情報を確認しましょう。
(4) 機内持ち込みのルール
薬は手荷物として機内に持ち込み可能です。
ポイント:
- 液体の薬も透明ボトルへの移し替え不要(元のパッケージのままOK)
- 処方薬は預け荷物ではなく機内持ち込み荷物に入れる(預け荷物紛失に備えるため)
- 薬剤証明書も機内持ち込み荷物に同封
JAL Mallの記事でも、処方薬は機内持ち込み荷物に入れることが推奨されています。
持っていくべき常備薬リスト
(1) 解熱鎮痛剤(頭痛・発熱対応)
おすすめ: ロキソニン、イブプロフェン、アセトアミノフェン
解熱鎮痛剤は、頭痛・発熱・筋肉痛など多様な症状に対応できます。Medifellowの医師監修記事では、海外旅行の必需品として解熱鎮痛剤が挙げられています。
服用のタイミング: 頭痛・発熱時、長時間移動後の筋肉痛時
(2) 胃腸薬・整腸剤・下痢止め
おすすめ:
- 胃腸薬: 太田胃散、ガスター10
- 整腸剤: ビオフェルミン、新ビオフェルミンS
- 下痢止め: 正露丸、ストッパ
海外では飲食物の違いから腹痛・下痢になりやすいです。整腸剤は予防的に服用できるため、旅行前から飲み始めるのも効果的です。
厚生労働省検疫所FORTHによると、旅行者下痢症は海外旅行中の最も一般的な健康問題の一つです。
(3) 風邪薬・咳止め・鼻炎薬
おすすめ:
- 総合風邪薬: パブロン、ルル
- 咳止め: 咳止め成分入りの風邪薬
- 鼻炎薬: アレグラ、アレジオン(花粉症持ちの方)
気候の変化や移動疲れで風邪を引きやすくなります。咳止めの中には麻薬成分を含むものがあるため、国によっては持ち込み禁止の場合があります。渡航先の規制を確認してください。
(4) 酔い止め
おすすめ: トラベルミン、アネロン
長距離バス・船・遊覧飛行などで乗り物酔いしやすい方は必携です。服用のタイミングは乗車・搭乗の30分~1時間前です。
(5) その他(虫刺され・絆創膏等)
- 虫刺され薬: ムヒ、ウナコーワ(蚊・ダニ対策)
- 絆創膏: ケガや靴擦れ対応
- 目薬: 乾燥地域や長時間移動時
- 日焼け止め: 紫外線対策
(6) 必要量の目安と持ち込み方法
必要量の目安は「旅行日数分+1週間分の予備」程度です。大量に持ち込むと営業目的を疑われる可能性があります。
たびともの記事では、以下の持ち込み方法が推奨されています。
- 元のパッケージ(外箱・PTPシート)のまま持参
- 薬の名前・成分が分かるようにする
- 機内持ち込み荷物に入れる(預け荷物紛失に備えるため)
処方薬を持参する場合の手続き
(1) 薬剤証明書の取得方法
処方薬を持参する場合は、「薬剤証明書」を病院で発行してもらいます。
薬剤証明書(または薬剤携行証明書)は、処方薬を服用している理由・病名を医師が証明する書類です。厚生労働省の情報によると、処方薬を持参する際は、薬剤証明書を携行することが推奨されています。
取得方法:
- 処方した病院に「海外旅行用の薬剤証明書が必要」と依頼
- 医師が病名・薬名・服用理由を記載
- 英文証明書も依頼(費用: 3,000~5,000円程度)
(2) 英文証明書の必要性
在日米国大使館によると、米国への入国時には英文の処方箋・診断書を携行することが推奨されています。
英文証明書には以下の情報を記載します。
- 患者名
- 病名(英語)
- 薬名(一般名・商品名)
- 用法・用量
- 服用期間
- 医師の署名・医療機関の印鑑
英文証明書は税関での説明がスムーズになり、トラブルを避けられます。
(3) 粉薬・液体薬の注意点
アイン薬局の薬剤師監修記事によると、粉薬は違法薬物と誤解されるリスクがあるため、錠剤・カプセルなど他の剤形に変更を医師に相談することが推奨されています。
液体薬(シロップ等)も同様に、錠剤・カプセルに変更できないか相談しましょう。
(4) パッケージはそのまま持参する理由
薬は元のパッケージ(外箱・PTPシート)のまま持参してください。
理由:
- 税関で成分確認がスムーズになる
- 他の容器に移し替えると違法薬物を疑われる可能性あり
- 現地で医師に見せる際に薬名・成分が分かりやすい
たびともの記事でも、パッケージのまま持参することが強く推奨されています。
現地で薬を購入する際の注意点
(1) 成分・用量の違いと副作用リスク
海外の薬は成分・用量が日本と異なる場合があります。
東京都健康安全研究センターによると、海外の薬は成分が強い・用量が多い場合があり、副作用リスクに注意が必要です。
日本から持参した薬が安心ですが、緊急時は現地の薬局を利用できます。
(2) 英語での症状説明(薬局での対応)
現地の薬局で薬を購入する際は、英語で症状を説明する必要があります。
基本フレーズ:
- I have a headache.(頭痛がします)
- I have a stomachache.(腹痛がします)
- I have diarrhea.(下痢をしています)
- I need painkillers.(鎮痛剤が必要です)
事前に症状を英語で言えるよう準備しておくとスムーズです。
まとめ:渡航先別の薬の準備チェックリスト
海外旅行に持っていく薬は、市販薬(解熱鎮痛剤・胃腸薬・整腸剤・下痢止め・風邪薬・酔い止め)が基本です。処方薬を持参する場合は、病院で「薬剤証明書」を発行してもらい、英文を用意すると安心です。
必要量の目安は「旅行日数分+1週間分の予備」程度で、元のパッケージ(外箱・PTPシート)のまま持参してください。粉薬は違法薬物と誤解されるリスクがあるため、錠剤・カプセルなど他の剤形に変更を相談しましょう。
向精神薬・医療用麻薬は国によって厳格な規制があり、無許可持ち込みは重い刑罰の対象です。渡航前に厚生労働省や渡航先大使館の公式サイトで最新情報を確認してください。
海外旅行保険にも加入し、万が一の医療費に備えましょう。医師・薬剤師への相談も忘れずに行ってください。
