1. 研修旅行がなぜ今注目されるのか
企業の人材育成において、「研修旅行」が再び注目を集めています。コロナ禍で一時的に中断していた企業も、2023年以降は徐々に再開しており、特にリモートワークの普及により対面コミュニケーションの重要性が見直されています。
研修旅行とは、単なる慰安旅行ではなく、人材育成・チームビルディング・業務生産性向上を目的とした旅行です。従来の座学型研修と異なり、「非日常の環境で学ぶ」「体験を通じて成長する」という点が特徴で、記憶定着率が高いとされています(日本能率協会マネジメントセンター)。
2025年現在、特に注目されているのが以下のトレンドです。
- 大阪・関西万博の活用:カーボンニュートラル・SDGsをテーマにした体験型研修
- ワーケーション型研修:地方でのテレワーク+研修の組み合わせ
- アウトドア体験型:チームビルディングを目的としたアクティビティ(農業体験・登山等)
これらのプランは、従来の「観光+懇親会」型から、「学び+実践」型へとシフトしています。企業の人材育成担当者や総務担当者にとって、どのような研修旅行を企画すれば効果的か、費用はどれくらいかかるのか、経費計上は可能かといった疑問は尽きません。
この記事では、研修旅行の基礎知識・予算・おすすめプラン・企画のコツを解説します。企業の研修旅行計画の参考にしてください。
2. 研修旅行の基礎知識:目的・種類・社員旅行との違い
研修旅行を企画する前に、基礎知識を押さえておくことが重要です。以下、目的・種類・社員旅行との違いを解説します。
(1) 研修旅行の3つの主要目的
研修旅行の主要目的は以下の3つです。
①人材育成・スキルアップ:
- 新入社員研修(ビジネスマナー・企業理念の浸透)
- 中堅社員研修(リーダーシップ・マネジメントスキル)
- 視察研修(他社・他業界のベストプラクティス学習)
②チームビルディング・組織活性化:
- 部署間の壁を壊し、横のつながりを強化
- 非日常環境でのコミュニケーション促進
- チーム課題解決型のアクティビティ(謎解き・アウトドア体験等)
③業務生産性向上:
- 日常業務から離れた環境での集中的な議論・企画立案
- 新規事業アイデアの創出
- 業務プロセスの見直し・改善提案
これらの目的が明確であれば、研修旅行の費用を経費として計上しやすくなります(詳細は「3. 研修旅行の予算設定と経費計上のポイント」で解説)。
(2) 研修旅行の2つの基本タイプ
研修旅行は、大きく2つのタイプに分けられます。
①研修特化型:
- 内容:研修プログラムが主体で、観光要素は最小限
- 期間:1泊2日-2泊3日
- 例:新入社員合宿研修(座学+グループワーク)、リーダーシップ研修(ケーススタディ+ロールプレイ)
- メリット:経費計上しやすい、研修効果が高い
- デメリット:参加者の負担が大きい、リフレッシュ効果が低い
②研修+観光型:
- 内容:研修プログラム(半日-1日)+観光・レクリエーション
- 期間:2泊3日-3泊4日
- 例:視察研修+地域観光、チームビルディング+温泉・グルメ
- メリット:参加者満足度が高い、リフレッシュ効果がある
- デメリット:観光要素が強すぎると経費計上が難しい場合がある
一般的には、新入社員研修は「研修特化型」、中堅社員・管理職研修は「研修+観光型」が選ばれる傾向があります(日本能率協会マネジメントセンター)。
(3) 研修旅行と社員旅行の違い
研修旅行と社員旅行は、目的・経費処理の点で大きく異なります。
| 項目 | 研修旅行 | 社員旅行 |
|---|---|---|
| 目的 | 人材育成・業務生産性向上 | 慰安・親睦 |
| 内容 | 研修プログラム主体 | 観光・レクリエーション主体 |
| 経費処理 | 旅費交通費または福利厚生費(条件付き) | 福利厚生費または給与(条件により) |
| 参加義務 | 業務の一環として参加義務あり | 任意参加が一般的 |
| 研修記録 | 日程表・研修内容の記録保管が必須 | 記録保管は不要 |
研修旅行を経費として計上するには、「業務との関連性が明確」「研修目的が具体的」「記録保管がある」という3つの要件を満たす必要があります。詳細は次のセクションで解説します(国税庁)。
3. 研修旅行の予算設定と経費計上のポイント
研修旅行を企画する際、予算設定と経費計上のルールを理解しておくことが重要です。以下、予算相場・経費要件・福利厚生費と旅費交通費の違いを解説します。
(1) 研修旅行の予算相場
研修旅行の予算相場は、1人あたり3万円前後が平均です。ただし、研修内容・宿泊施設・期間により大きく異なります。
1泊2日の場合:
- 研修特化型:2-3万円(ビジネスホテル+研修施設利用料)
- 研修+観光型:3-5万円(温泉宿+観光・食事代)
2泊3日の場合:
- 研修特化型:4-6万円
- 研修+観光型:6-10万円
内訳例(1泊2日・1人あたり):
- 交通費:5,000-15,000円(新幹線・航空券)
- 宿泊費:8,000-15,000円(1泊)
- 研修費用:5,000-10,000円(研修施設利用料・講師費用)
- 食事代:3,000-5,000円(昼食・夕食・朝食)
- 合計:2-5万円
福利厚生費として計上する場合は、1人あたり10万円以内が目安とされています。これを超えると、給与として課税される可能性があります(国税庁)。ただし、具体的な上限額は法律で明示されていないため、税理士に相談することを推奨します。
(2) 経費として計上するための要件
研修旅行の費用を経費として計上するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
①業務との関連性が明確:
- 研修内容が業務に直結している(営業スキル研修・マネジメント研修等)
- 視察先が業務に関連している(同業他社・先進企業等)
②研修目的が具体的:
- 研修プログラムが明確に設定されている(タイムテーブル・カリキュラム)
- 観光・レクリエーションだけでなく、学習・実践の時間が確保されている
③記録保管がある:
- 日程表・研修内容・参加者リストを保管
- 研修報告書・アンケート結果を作成
- 税務調査に備えて、証拠書類を整理
これらの要件を満たさない場合、税務調査で経費として否認される可能性があります。特に、「観光要素が強すぎる」「研修内容が不明確」といったケースは注意が必要です(国税庁)。
(3) 福利厚生費と旅費交通費の違い
研修旅行の費用は、「福利厚生費」または「旅費交通費」として計上されます。2つの違いは以下の通りです。
福利厚生費:
- 定義:従業員の福利厚生を目的とした支出
- 適用例:チームビルディング型研修、社員旅行に近い研修
- 条件:全社員(または特定部署の全員)が対象、1人10万円以内が目安
- 課税:10万円を超えると給与として課税される可能性
旅費交通費:
- 定義:業務遂行に直接必要な旅費・交通費
- 適用例:視察研修、業務関連性が明確な研修
- 条件:業務との関連性が明確、研修内容が具体的
- 課税:適切に計上すれば課税されない
一般的には、業務関連性が明確であれば「旅費交通費」、チームビルディング・親睦要素が強ければ「福利厚生費」として処理します。どちらに該当するか不明な場合は、税理士に相談することを推奨します(日本税理士会連合会)。
4. 目的別おすすめプランと選び方
研修旅行のプランは、目的により選択すべき内容が異なります。以下、目的別におすすめプランを紹介します。
(1) チームビルディング重視型
対象:新入社員、部署横断プロジェクトチーム、リモートワーク中心の企業
おすすめプラン例:
①アウトドア体験型(長野・山梨・北海道等):
- 内容:登山・キャンプ・農業体験・カヌー等のアクティビティ
- 期間:1泊2日-2泊3日
- 予算:3-6万円/1人
- 効果:チームワーク・問題解決能力の向上、非日常体験によるリフレッシュ
- 注意点:体力に自信がない参加者への配慮、天候不順のリスク
②謎解き・脱出ゲーム型(東京・大阪等の都市部):
- 内容:チーム対抗の謎解きゲーム、脱出ゲーム
- 期間:半日-1日(宿泊なしも可)
- 予算:1-3万円/1人
- 効果:コミュニケーション能力・論理的思考力の向上
- 注意点:ゲーム要素が強いため、研修目的を明確にする必要がある
これらのプランは、座学型研修と比べて参加者の満足度が高い傾向があります(日本能率協会マネジメントセンター)。
(2) スキルアップ・視察型
対象:中堅社員、管理職、特定スキル習得を目指す社員
おすすめプラン例:
①企業視察+ワークショップ型(京都・福岡・名古屋等):
- 内容:先進企業・同業他社の視察、ベストプラクティス学習、グループワーク
- 期間:2泊3日
- 予算:5-8万円/1人
- 効果:業務改善のヒント獲得、他社事例の学習
- 注意点:視察先との事前調整、守秘義務契約の締結
②地域課題解決型(地方都市・過疎地域):
- 内容:地域の課題(人口減少・観光振興等)をテーマにした課題解決ワークショップ
- 期間:2泊3日-3泊4日
- 予算:6-10万円/1人
- 効果:課題解決能力・企画力の向上、地域貢献
- 注意点:地域との事前調整、成果物の扱い
これらのプランは、業務との関連性が明確で、経費計上しやすい傾向があります(経済産業省)。
(3) 2025年注目の研修旅行プラン
2025年現在、特に注目されている研修旅行プランは以下の3つです。
①大阪・関西万博活用型:
- 内容:大阪・関西万博(2025年4月-10月開催)を活用したカーボンニュートラル・SDGs体験型研修
- 期間:2泊3日
- 予算:6-10万円/1人
- 効果:最先端技術・環境問題への理解、未来志向の発想力
- 注意点:万博会場の混雑、早期予約の必要性
②ワーケーション型:
- 内容:地方(沖縄・北海道・長野等)でのテレワーク+研修の組み合わせ
- 期間:3泊4日-1週間
- 予算:5-12万円/1人
- 効果:リモートワークの生産性向上、地域理解、ワークライフバランスの実践
- 注意点:Wi-Fi環境の確認、業務との両立
③サステナビリティ学習型:
- 内容:再生可能エネルギー施設・エコツーリズム・地域循環型農業の視察
- 期間:2泊3日
- 予算:5-8万円/1人
- 効果:SDGs・ESG経営への理解、環境意識の向上
- 注意点:視察先との事前調整、専門知識の習得
これらのプランは、2025年のトレンド(万博・SDGs・ワーケーション)を反映しており、企業のブランディングにも寄与します(観光庁)。
5. 研修旅行を成功させる企画のコツと注意点
研修旅行を成功させるには、企画段階での準備が重要です。以下、企画のコツと注意点を解説します。
(1) 企画段階の3つのチェックポイント
①目的とゴールの明確化:
- 何を達成したいのか(スキルアップ・チームビルディング・業務改善等)を明確にする
- 研修後の成果をどう測定するか(アンケート・KPI設定等)を決める
②参加者のニーズ把握:
- 事前アンケートで参加者の希望・興味を調査
- 体力レベル・健康状態を確認(アウトドア体験型の場合)
- 不参加者への配慮(任意参加か義務参加かを明確にする)
③予算とスケジュールの調整:
- 予算上限を設定し、その範囲内でプランを選定
- 繁忙期を避け、参加率が高い時期を選ぶ
- 宿泊施設・研修施設の早期予約(3-6か月前が推奨)
これらのチェックポイントを押さえることで、参加者満足度が高く、経費計上もスムーズな研修旅行が実現します(日本能率協会マネジメントセンター)。
(2) 参加者の公平性確保と不参加者への配慮
研修旅行を福利厚生費として計上する場合、全社員が公平に参加できる機会を提供することが重要です。以下の点に注意してください。
①参加対象の公平性:
- 特定の社員だけを優遇しない(例:管理職だけ、特定部署だけ)
- 全社員が参加できる機会を設ける(年次別・部署別にローテーション)
②不参加者への配慮:
- 不参加者に代替の研修機会を提供(オンライン研修・別日程の研修等)
- 不参加者が不利益を受けないようにする(評価・昇進に影響しない)
③参加義務の明確化:
- 業務の一環として参加義務があるか、任意参加かを明確にする
- 任意参加の場合、不参加者への給与相当額の支給は不要
これらの配慮を怠ると、社内の不公平感が生じ、研修効果が低下する可能性があります(国税庁)。
(3) 記録保管と税務対応
研修旅行の費用を経費として計上するには、以下の記録を保管する必要があります。
①保管すべき記録:
- 日程表・カリキュラム:研修内容・時間配分を明記
- 参加者リスト:氏名・所属部署・役職
- 研修報告書:研修内容・参加者の感想・成果
- 領収書・請求書:交通費・宿泊費・研修費用の証明
②保管期間:
- 法人:7年間(法人税法)
- 個人事業主:5-7年間(所得税法)
③税務調査への対応:
- 税務調査で「これは社員旅行ではないか」と指摘される可能性がある
- 研修目的・業務関連性を証明できる資料を準備
- 不明点は税理士に事前相談
これらの記録保管を徹底することで、税務調査のリスクを最小限に抑えられます(日本税理士会連合会)。
6. まとめ:企業の状況別おすすめ研修旅行プラン
研修旅行は、人材育成・チームビルディング・業務生産性向上を目的とした効果的な施策です。費用相場は1人あたり3万円前後が平均で、福利厚生費として計上する場合は10万円以内が目安です。経費として計上するには、業務との関連性・研修目的の具体性・記録保管が必須です。
企業の状況別おすすめプラン:
- 新入社員研修:研修特化型(1泊2日、2-3万円)、チームビルディング重視
- 中堅社員・管理職研修:研修+観光型(2泊3日、5-8万円)、スキルアップ・視察重視
- リモートワーク中心の企業:ワーケーション型(3泊4日、5-12万円)、対面コミュニケーション重視
- SDGs・環境意識向上:サステナビリティ学習型(2泊3日、5-8万円)、大阪・関西万博活用型(2泊3日、6-10万円)
研修旅行を成功させるには、目的とゴールの明確化・参加者のニーズ把握・予算とスケジュールの調整が重要です。参加者の公平性確保・不参加者への配慮・記録保管と税務対応も忘れずに実施してください。
経費計上のルールは複雑で、企業の状況により判断が異なる場合があります。不明点がある場合は、税理士に相談することを推奨します。適切に企画・実施することで、研修旅行は企業の成長と従業員の満足度向上に大きく貢献します。
