旅館とホテル、どちらを選ぶべきか
旅行計画を立てる際、宿泊施設選びで「旅館とホテル、どちらにするか」と迷う方は少なくありません。旅館とホテルは、設備・サービス・料金体系が大きく異なり、それぞれに適した利用シーンがあります。
この記事では、旅館とホテルの違いを、法律上の定義(旅館業法)・設備・サービス・料金相場の観点から厚生労働省の公式情報を元に解説します。
初めて宿泊施設を選ぶ方でも、旅館とホテルの違いを理解し、自分に合った宿泊施設を選べるようになります。
この記事のポイント
- 2018年6月15日の旅館業法改正により、旅館とホテルは「旅館・ホテル営業」として法的に一本化された
- 旅館は和室・1泊2食付・温泉/大浴場・仲居さんのおもてなしが特徴
- ホテルは洋室・朝食付or素泊まり・ユニットバス・プライバシー重視が特徴
- 旅館の平均宿泊料金は約15,000円/1泊2食付、ホテルは6,000円~15,000円/泊
- 温泉旅行・観光なら旅館、ビジネス出張・短期滞在ならホテルが適している
旅館とホテルの法律上の違い(旅館業法)
(1) 旅館業法の定義と2018年改正
旅館とホテルは、旅館業法により規制されています。厚生労働省によると、旅館業法とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を規制する法律」です。
旅館業法の概要:
- 1948年制定
- 旅館業には「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種がある
- 宿泊者の安全・衛生を確保するための基準を定める
2018年6月15日改正前の定義:
- 旅館営業: 和式の構造・設備を主とする施設、客室数5室以上
- ホテル営業: 洋式の構造・設備を主とする施設、客室数10室以上
- 客室数・広さで明確に区別されていた
(2) 旅館・ホテル営業の一本化
政府広報オンラインによると、2018年6月15日の旅館業法改正により、「旅館営業」と「ホテル営業」は「旅館・ホテル営業」として一本化されました。
一本化の背景:
- 旅館でもベッドや洋食レストランを導入する施設が増え、ホテルと旅館の境界線が曖昧化
- 和式・洋式の区別が実態に合わなくなった
- 規制を簡素化し、施設の多様化に対応
旅館・ホテル営業の要件(改正後):
- 施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業
- 客室数・和式洋式の区別なし
- 安全衛生基準を満たすこと
(3) 法的には同じでもサービスは大きく異なる
旅館業法上は「旅館・ホテル営業」として一本化されましたが、9STAYによると、実際のサービス内容は大きく異なります。
旅館の特徴:
- 和室・畳
- 1泊2食付が基本
- 仲居さんによる細やかなサービス
- 温泉・大浴場が充実
ホテルの特徴:
- 洋室・ベッド
- 朝食付または素泊まりが基本
- プライバシー・セキュリティ重視
- 客室内のユニットバス・シャワーが多い
設備・サービスの違いを徹底比較
(1) 客室の違い(和室・畳 vs 洋室・ベッド)
旅館とホテルの最も目立つ違いは、客室の構造です。
| 項目 | 旅館 | ホテル |
|---|---|---|
| 部屋のタイプ | 和室・畳 | 洋室・ベッド |
| 寝具 | 布団(仲居さんが敷設) | ベッド(事前にセット済) |
| 家具 | 座卓、座布団 | テーブル、椅子 |
| 雰囲気 | 和の趣、落ち着いた雰囲気 | 現代的、機能的 |
エアトリによると、旅館は和室・畳が基本で、仲居さんが布団を敷いてくれるのが特徴です。一方、ホテルは洋室・ベッドが基本で、事前にベッドがセットされています。
注意点:
- 近年、旅館でも洋室・ベッドを導入する施設が増加
- ホテルでも和室を設ける施設がある
- 施設により異なるため、予約前に確認を推奨
(2) 食事の違い(1泊2食付 vs 朝食付・素泊まり)
旅館とホテルでは、食事の提供方法が大きく異なります。
| 項目 | 旅館 | ホテル |
|---|---|---|
| 基本プラン | 1泊2食付(夕食+朝食) | 朝食付または素泊まり |
| 夕食 | 会席料理、郷土料理 | レストラン利用(別料金) |
| 朝食 | 和食(ご飯、味噌汁、焼き魚等) | 和洋バイキング、パン等 |
| 食事場所 | 客室または食事処 | レストラン・バイキング会場 |
旅館の食事の特徴:
- 1泊2食付が基本(料金に夕食・朝食が含まれる)
- 仲居さんが客室または食事処で配膳
- 会席料理や地元の郷土料理が楽しめる
ホテルの食事の特徴:
- 朝食付または素泊まりが基本
- 夕食は外食またはホテル内レストラン利用(別料金)
- 朝食は和洋バイキング、パン等
(3) 浴場の違い(温泉・大浴場 vs ユニットバス・シャワー)
浴場の設備も、旅館とホテルで大きく異なります。
| 項目 | 旅館 | ホテル |
|---|---|---|
| 浴場のタイプ | 温泉・大浴場が充実 | 客室内のユニットバス・シャワー |
| 共用浴場 | 大浴場・露天風呂 | なし(または別料金) |
| 客室浴場 | 客室に専用浴場がある場合も | ユニットバス(浴槽・洗面台・トイレ一体) |
エアトリによると、旅館は温泉や大浴場が充実しており、宿泊客が共用で利用できます。一方、ホテルは客室内のユニットバス・シャワーのみが多く、大浴場は少ないです。
温泉を楽しみたい場合:
- 旅館が適している(温泉・大浴場・露天風呂が充実)
- ホテルでも温泉付きリゾートホテルがあるが、旅館ほど充実していない場合が多い
(4) サービスの違い(仲居さんのおもてなし vs プライバシー重視)
旅館とホテルでは、サービスの方針が異なります。
| 項目 | 旅館 | ホテル |
|---|---|---|
| サービス方針 | 「おもてなし」を重視 | 「プライバシー・セキュリティ」を重視 |
| 接客スタイル | 仲居さんによる細やかなサービス | フロント対応、客室への出入り最小限 |
| 客室への出入り | 仲居さんが布団の敷設、食事の配膳で出入り | 清掃時以外はほぼなし |
| チェックイン/アウト | 時間が決まっている(例: 15:00-10:00) | 深夜チェックイン・早朝チェックアウト可 |
ホテルビズによると、旅館は仲居さんによる布団の敷設や食事の配膳など細やかなサービスがあり、「おもてなし」を重視しています。一方、ホテルは「プライバシー・セキュリティ」を重視し、客室への出入りは最小限です。
旅館のサービスの特徴:
- 仲居さんが布団を敷いてくれる
- 食事を客室または食事処で配膳
- 浴衣・タオルの提供
- 人と接する機会が多い
ホテルのサービスの特徴:
- セルフサービスが基本
- フロント対応のみ、客室への出入りは最小限
- プライバシー確保、セキュリティ重視
- 深夜チェックイン・早朝チェックアウトに対応しやすい
料金相場の違いと予算の目安
(1) 旅館の料金相場(平均15,000円/1泊2食付)
おもてなしHRによると、旅館の平均宿泊料金は約15,000円/1泊2食付です。
旅館の料金相場(2025年時点):
| 利用シーン | 1人あたり料金(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| カップル・夫婦 | 15,000円~30,000円 | 温泉旅館、会席料理込み |
| 家族旅行 | 12,000円~25,000円 | 小学生以下割引あり |
| グループ旅行 | 10,000円~20,000円 | 複数人利用で割引 |
料金に含まれるもの:
- 宿泊費
- 夕食(会席料理・郷土料理)
- 朝食(和食)
- 温泉・大浴場の利用
- 仲居さんのサービス
(2) ホテルの料金相場(ビジネスホテル6,000円、シティホテル10,000円、リゾートホテル15,000円)
エアトリによると、ホテルの料金相場は以下の通りです。
ホテルの料金相場(2025年時点):
| ホテルタイプ | 1人あたり料金(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| ビジネスホテル | 6,000円~ | 素泊まりまたは朝食付 |
| シティホテル | 10,000円~ | 朝食付、設備充実 |
| リゾートホテル | 15,000円~ | 温泉付きリゾートホテル等 |
主要都市の平均宿泊料金:
- 東京: 12,704円
- 大阪: 11,637円
- 京都: 13,767円
(参考: エアトリ、2025年時点)
料金に含まれるもの:
- 宿泊費
- 朝食(朝食付プランの場合)
- ユニットバス・シャワーの利用
(3) 繁忙期の料金変動と予約のタイミング
旅館・ホテルともに、繁忙期は料金が大きく変動します。
繁忙期:
- ゴールデンウィーク(GW)
- 夏休み(7月下旬~8月)
- シルバーウィーク(9月中旬)
- 年末年始(12月下旬~1月上旬)
- 桜・紅葉シーズン(地域により異なる)
料金変動の目安:
- 繁忙期は通常期の1.5~2倍に高騰する可能性あり
- 早期予約割引(3ヶ月前予約で10-20%割引)の活用を推奨
- 直前予約は空室があれば割安の場合もある
予約のタイミング:
- 繁忙期は3ヶ月前までの予約が推奨
- 通常期は1ヶ月前でも予約可能
- 旅館は1泊2食付のため、早めの予約が確実
利用シーン別のおすすめ選択
(1) 温泉旅行・観光なら旅館(食事の手配不要、細やかなサービス)
温泉旅行・観光を楽しみたい場合、旅館が適しています。
旅館のメリット:
- 食事の手配不要: 1泊2食付で夕食・朝食が込み
- 温泉・大浴場: 温泉や露天風呂が充実
- 細やかなサービス: 仲居さんによる布団の敷設、食事の配膳
- 会席料理: 地元の郷土料理が楽しめる
旅館のデメリット:
- 時間の融通が利きにくい: チェックイン/アウトの時間が決まっている
- 人と接する機会が多い: 仲居さんが客室に出入りするため、プライバシーを重視する人には不向きな場合がある
- 料金が高め: 1泊2食付で平均15,000円~
(2) ビジネス出張・短期滞在ならホテル(時間の融通、プライバシー)
ビジネス出張・短期滞在には、ホテルが適しています。
ホテルのメリット:
- 時間の融通が利く: 深夜チェックイン・早朝チェックアウトに対応しやすい
- プライバシー確保: 客室への出入りは最小限、セキュリティ重視
- 急な宿泊に対応可能: 素泊まりプランで当日予約も可能
- 料金が安め: ビジネスホテルなら6,000円~
ホテルのデメリット:
- 食事は別料金: 夕食は外食またはホテル内レストラン利用(別料金)
- 温泉・大浴場が少ない: 客室内のユニットバス・シャワーが多い
- サービスは最小限: セルフサービスが基本
(3) それぞれのメリット・デメリット
ホテルビズによると、旅館とホテルのメリット・デメリットを以下にまとめます。
旅館のメリット:
- 食事の手配不要(1泊2食付)
- 細やかなサービス(仲居さんのおもてなし)
- 温泉・大浴場が充実
- 会席料理・郷土料理が楽しめる
旅館のデメリット:
- 時間の融通が利きにくい
- 人と接する機会が多い
- 料金が高め
ホテルのメリット:
- 自由度の高さ(深夜チェックイン・早朝チェックアウト可)
- プライバシー・セキュリティ確保
- 急な宿泊に対応可能
- 料金が安め(ビジネスホテルなら6,000円~)
ホテルのデメリット:
- 食事は別料金
- 温泉・大浴場が少ない
- サービスは最小限
まとめ:自分に合った宿泊施設の選び方
旅館とホテルは、2018年6月15日の旅館業法改正により「旅館・ホテル営業」として法的に一本化されましたが、実際のサービス内容は大きく異なります。旅館は和室・1泊2食付・温泉/大浴場・仲居さんのおもてなしが特徴で、ホテルは洋室・朝食付or素泊まり・ユニットバス・プライバシー重視が特徴です。
料金相場は、旅館の平均が約15,000円/1泊2食付、ホテルはビジネスホテル6,000円、シティホテル10,000円、リゾートホテル15,000円が目安です(2025年時点)。繁忙期は通常期の1.5~2倍に高騰する可能性があるため、早めの予約を推奨します。
温泉旅行・観光なら旅館(食事の手配不要、細やかなサービス)、ビジネス出張・短期滞在ならホテル(時間の融通、プライバシー確保)が適しています。自分の旅行目的・予算・スタイルに合わせて、最適な宿泊施設を選びましょう。
